中国発信の振り込め詐欺

Godzilla

Administrator
Staff member
それは今年8月のことだった。横浜市のワンルームマンションに住む、中国籍の男、二人が逮捕された。振り込め詐欺で騙し取った金を、ATMから引き出す様子が防犯カメラに映っていた。

〇近所の人
「話が日本語じゃないから。なんだろうなとは思っていた」

〇同じマンションの住人
「あんまり(住人同士)コミュニケーションないんだ。このマンション全然ね」「よく(住む人が)変わるみたい」

実は、この二人を含むグループが想像を超えた手法で、振り込め詐欺を行っていたことが分かった。

被害者を騙すための電話は、なんと中国からかけられていた。摘発を逃れるため、実行犯らは中国に潜伏し、そこから日本の仲間に指示を出していたというのだ。

本当なのか?

雑誌記者の菊池さんは、去年9月、仕事でインターネットの“闇サイト”の実態を取材した際に、不思議な“バイト広告”が目に留まったという。

〇ふきかえ
「新規事業拡大のため、単発の仕事から長期にわたる仕事まで、全国各地から募集しております。やるなら今しかありません。」

〇ミリオン出版 菊池亨さん
「割とほかの(広告)が短い中で長期間というのは、いったいどういうような仕事なのかなと」

詳しい仕事の内容を聞きたいと、広告主にメールを送るとすぐ返事が返ってきた。そこには

〇ふきかえ
「中国から電話で日本に向けての詐欺です。リスク回避は万全です。平均1000万円いくので、10%の100万円が月収になります。」

仕事の内容が、詐欺であることと、1ヶ月につき、100万円という多額の報酬が手にできると書いてあったのだ。

菊池さんは、さらに詳しいことを聞くため、広告主に直接電話し、その内容を録音した。

〇<電話の呼び出し音>
〇広告主「はい。」
〇菊池さん「もしもし」
〇広告主「はい。」
〇菊池さん「仕事内容がちょっと、ぜんぜん分からないんですけど」
〇広告主「あの電話業務なんですけど、中国で電話するんですね。要は詐欺なんですね。」
〇菊池さん「ええええ。よくある振り込め詐欺みたいな?」
〇広告主「内容っていうのは、自分、いま日本で一応、頭になってやってるんですけど、“漏れたら駄目”ということなんで自分でさえ内容というのは教えてもらえないんですよ」
〇菊池さん「ああ、そうなんですか。なんかやばいことってあります?」
〇広告主 「は、無いですね。で、中国の警察っていうのは、そんなことでは動かないんですよ」

詐欺だとはいうが、彼には仕事の内容を明かす権限が無いという。菊池さんは、再度、彼の上司にあたる人物に電話をした。
     
〇広告主の上司「あのもしもし。
〇菊池さん    「もしもし」
〇広告主の上司「ビザ取得してもらって、2,3日中にそれで出発してもらうと」
〇菊池さん   「中国のどこなんですか、場所は?」
〇広告主の上司「福建省です。三ヶ月まるまるいってもらいます。」中国の滞在費。食費等はこちらでもちます。ぶっちゃけて100万円くらいいくと思うんですよ(一月)普通にやるぶんには。」
〇菊池さん 「いわゆる、これ振り込め詐欺みたいな感じの仕事?」

〇上司   「それは言えません。」
結局、広告主は最後まで、仕事の中身が振り込め詐欺かどうかは明らかにしなかった。菊池さんは「よく考えてまた電話する」と告げ、以降、相手との連絡を絶ったという。

〇ミリオン出版 菊池亨さん
「中国に3ヶ月いって300万円か、悪い話じゃないなと思ってもおかしくない。というのはリスクがないっていうんですよ。中国にいるから要は犯罪行為だけども、捕まらないと」中国から日本に「振り込め詐欺の電話をかける」集団が、本当に存在するのか?

〇足音アップ
実は、中国で、その犯行現場を実際に目撃したという人物がいた。
                             
関東に住む澤田さんは、中国で、振り込め詐欺の電話をかけている現場を目撃したという。

きっかけは、詐欺グループを率いる“ヤマザキ”という男が事業への参加を呼びかけてきたことだった。

〇澤田さん
「『海外へ行ってする仕事なんだ』『誰にでもできる』
『三ヶ月ぐらいの滞在で、相当のお金を稼いでこれるんだけど興味がないか』と。
一応、じゃ、現地に行ってみようかということで、 目の当たりにした。」

“ヤマザキ”に連れられ、見知らぬ日本人の若者5人とともに成田を立ち、福建省のアモイに到着。そこから、車で3時間ほどの福州に移動したという。そして次の日から、それは始まった。

〇澤田さん
「一番最初にやることというのは、振り込め詐欺の被害者になりえる方のデータ収集から始める。」
   
データ収集は、4人ごとに一つの部屋に入って行われた。澤田さんの部屋には、日本語が話せる中国人が二人。日本人が一人。そして、朝一番にヤマザキから、携帯電話と会話のマニュアル。電話帳が配られたという。

〇ノイズ~ガサゴソ

澤田さんは、室外への持ち出しが禁じられていた電話帳と会話のマニュアルの一部を、ヤマザキにわからないよう、ひそかに日本に持ち帰った。これがその電話帳だ。よく見ると、名前の下に線が引かれている。すべて女性の名前だ。

〇澤田さん
「一番先にやる作業というのは、(電話帳の)女性の名前にアンダーラインをひく。最初のうちの(ヤマザキ)の説明では、もう何のことだか分からない、アンダーラインをひいてくれと。」

ヤマザキが率いるグループが狙っていたのは、“高齢者の女性”だった。若い女性は電話帳に番号を載せることを嫌う。電話帳に世帯主として登録している女性は、高齢者で、相談する夫もいない可能性が高いというのだ。その作業が終わると、一枚のマニュアルを渡され、線をひいた連絡先に電話するよう促されるという。そこにはこんな会話が記されている。

〇ふきかえ
「○○さんのお宅でしょうか?こちら携帯電話情報管理センターの△△と申します。今回お電話したのは、□□県内の携帯電話の普及率の調査なんですが、○○さんは携帯電話のご利用は頂いておりますでしょうか?」

電話の相手が「利用していない」と応えれば、「家族で利用している人はいるか?」などと聞き、家族構成を調べるよう命じられた。肉親を語って電話する、ほかの詐欺グループに情報を流すためだという。しかしヤマザキ率いるグループがターゲットとするのは、携帯を「利用している」と応えた人物だという。

〇記者
「なぜ携帯が必要?」
〇澤田さん  
「ATMの前で振り込みをさせるときに手順を伝える手段。携帯電話がないと、ATMから振り込ませるという作業が困難になるのでだいたいはじかれる」

この段階で、ヤマザキは、電話をかけるだまし役に適した人材を、集めた人の中から選び出すというのだ。

〇澤田さん
「マニュアルをやるにあたって言い回しとかセンスを向こうが感じ取るものがあるんでしょうね。こいつ使えるなというのであれば次のステップへいくと」

次のステップとして用意されたのは大量の“マニュアル”だった。“財務省納税管理局”“年金保険課”“社会保健医療センター”“NTT東日本お客様料金センター”…

それぞれ “税金”“年金保険料”“医療費”“電話料金”などを「過剰にとりすぎたため、返します。」と騙して、相手をATM前までおびき寄せるのだ。振り込め詐欺の中でも、“還付金”詐欺と呼ばれる手口だ。

〇記者
「名目は“お金が返ってくる”という話。振り込み手続きをすることに被害者は)矛盾を感じないのか?」

〇澤田さん
「“こちらからのお振込みによって受け取りをしていただく”というワードを使う。ですから“振込み”というボタンを押してくださいと。判断能力が鈍いかたは、そのまま信用して、高齢の方が手続きをATMであまりしたことがない、もう言われたままにやってしまうんだと思います。」

マニュアルには相手を信用させるための、留意点も記されていた。

〇澤田さん
「返ってくるお金(還付金)があまりにも高額だと疑われてしまう。安かったら、手続きに行かない。安からず。高すぎず」

犯行グループは“高齢”の“女性”で“携帯を持っている”!)。犯行グループは、3つの条件を満たすターゲットから次々と金を騙しとっていったという。

〇澤田さん
「電話をしながら受けてる人間はガッツポーズをしてますし、回りも聞き耳をたてて、競争意識等も芽生えるんじゃないでうかね。自分は海外にいるから決してつかまらない、安全なんだということをかなり強くいわれて、もう犯罪意識は希薄になって、やる気になる」

澤田さんは、犯人グループにパスポートを取り上げられていたため、ビザが切れるまでの三ヶ月間、そこで犯行を目撃することになったという。澤田さんのこの証言は、本当なのだろうか?

実は、電話帳やマニュアルには、ところどころに、グループのメンバーによる直筆の書き込みが残されていた。そのうちのひとつが、小田急線の本厚木駅近くのスーパーの名前だ。実際に行ってみた。

〇ノイズ

スーパーには、外から見える場所に確かにATMがあった。「買い物のついでに振り込んで」と誘いやすく、銀行員に制止される可能性もないため、この無人のATMを指定していたようだ。さらに、電話帳でチェックされた名前の女性にも、話を聞くことができた。確かに身辺をさぐる電話が何度もかかってきたという。

〇チェックされていた女性
「(怪しい電話は)四回。96800円。(医療費が)去年9月から振り込みができないから口座の番号を教えろ“と。
〇記者「電話帳に名前が載っていることは知っていたか?」
〇女性「昭和37年に電話をひいた。ずっと手続きとらないで、ずっと載ってますでしょ。私、電話帳見たことないんですよ。」

女性は実際に振込みはしなかったが、なぜ連絡先が知られたのか不審に思っていたという。今年に入って、振り込め詐欺の被害が急増している。被害額はわずか10ヶ月で4年前のピーク時に並ぶ、251億円を記録。毎日1億円が騙し取られている計算になる。詐欺集団が検挙を免れる要因となっているのが、転売される銀行口座や携帯電話の存在だ。犯人の名義でないため、仮に発覚しても捜査の手が及ぶことはない。ヤマザキ率いる中国のグループも、料金を負担することなく、国際電話をかけていたという。請求は、携帯の名義人にいくからだ。

〇ノイズ
振り込め詐欺で、最も重要なその携帯電話を入手するため、ヤマザキが、話を持ちかけた人物がいる。埼玉県内の飲食店で、チーフマネージャーをしていた平木さんだ。

〇平木さん
「『いい小遣いになるよ、携帯電話を申し込んで作ってくれればいい。そしたら日当を出すから』」と

ヤマザキからの依頼は、本人に代わって携帯電話を契約するというもので、誰でもできる簡単なものだと説明されたという。

〇平木さん
「『一台作ってくれれば5千円。2台作ればさらに5千円。だいたい、1日3,4台作れるでしょ?』って感じでああ簡単だなと。」

平木さんは軽い気持ちで、引き受けた。ヤマザキから渡された、他人の保険証と印鑑を手に携帯電話ショップに向かった。だが、「電話料金を引き落とせる口座が無いと契約できない」と断られたという。そこで、口座を作るため郵便局を訪ねた。ところが思わぬ事態が平木さんを待っていた。

〇平木さん
「『もうちょっとなんで』と待たされたときに、なんか違う空気を察してヤマザキに電話を入れたと同時に、8~9人に一気に囲まれて、『誰の通帳作ってたんだ』『誰の保険証?』『なんですか』といったら警察だった。」

ヤマザキから渡された保険証は偽物だった。平木さんは、公文書偽造・有印私文書偽造・同行使詐欺の罪で逮捕された。執行猶予がついたため3ヶ月の拘留後、釈放されたが、戻ったときには、職場と生活の基盤をすべて失っていた。

〇平木さん
「無くすのは簡単。気が遠くなった。確かにおいしい話、甘い話かもしれないけど、絶対にやめたほうがいいと思う。」

澤田さんと平木さんの証言から、ヤマザキの役割が浮かび上がった。大量の携帯電話を調達し、それを使う詐欺の実行役を中国に送り込んでいたのだ。果たして、ヤマザキは、現在も中国に潜伏し、振り込め詐欺を行っているのか??澤田さんとともに、中国のアジトに向かった。

中国東南部の福建省。”華僑の故郷”と呼ばれ、古くからサクセスストーリーを夢見る人々がここから海外に出ていった。

〇ノイズ
澤田さんが、ヤマザキからアジトの場所として聞かされていたのは、8箇所。うち、実際に澤田さんが立ち寄ったのは、アモイの4箇所と福州の3箇所だ。一番長く滞在し、場所の記憶がはっきりしているという福州のアジトを目指した。

〇澤田さん「フワワェイ、あれだよ。」
それは、福州にあるフワワェイホテルだった。その15階の二部屋を作業用に別の階の部屋をそれぞれの滞在用に借りていたという。

〇澤田さん 
「ここに1人、ここでも一人。ここで3人。あとベッドの上でやってたりと。。」

ヤマザキが率いる振り込め詐欺グループは、今もこのホテルで、犯行に及んでいるのか?

〇記者
「このホテルに日本人の客はいますか?」
〇ホテルフロント従業員
「いません。」
〇記者
「去年の夏、長期間泊まっていた日本人を覚えてますか?」
〇フロント
「いました。でもはっきりとは覚えていません。」

去年は確かに滞在していたが、今は日本人の利用者はほとんどいないという。

次に向かったのは、このホテルから車で5分ほどの宿だ。1ヶ月間借りても賃料が3万円ほどで済むので、ヤマザキらは、途中からこの宿を利用するようになったという。澤田さんが、当時利用していた部屋まで案内した。7階の一番端の部屋だ。 

〇管理人
「日本人いないよ。星がついていない安宿だからね。」
〇記者
「去年1ヶ月以上日本人が泊まっていたの覚えてます?」
〇管理人
「確かに日本人がここにいたね。そうそうそう この人だ 彼もいたよ。」
〇記者「いつごろ、いなくなった?」
〇管理人 「さあ わからないねえ。」
どうやらグループはこの宿も既に引き払ったようだ。

ヤマザキのグループは、どこに消えたのか?よく立ち寄っていたという店の店長はこう証言した。

〇記者 
「どれくらい見ない?
〇店長「ここ半年くらい、見ないね。。」

半年間、ヤマザキは姿を見せないという。

中国から電話をかける、新手の振り込め詐欺グループを指揮していたヤマザキ。彼を探し回ったが、半年前に目撃されたのを最後に、その行方がつかめない。。だがもう一つ手がかりが残されていた。実はヤマザキには中国人の妻がいる。その妻の実家にいる可能性もある。親族に警戒されないよう、澤田さんが訪ねた。

〇ヤマザキの義理の弟
「(ヤマザキは)こっちにいないよ。」

応対したのは、ヤマザキの義理の弟だった。片言の日本語が話せるという。

〇義理の弟
「前、私にいった。東京(に戻ると)2ヶ月前・・
〇記者 
「その後、日本のどこに行ったか?」
〇義理の弟 
「これは、私、わかんない。」 
     
なんとヤマザキは2ヶ月前、日本に戻ったというのだ。目的は何なのか?ヤマザキの妻から話を聞くことができた。

〇ヤマザキの妻
「(ヤマザキは)どこにいるか、わからない。だから(振り込め詐欺は)やめちゃった。日本人は全部(日本に)帰りました。」

〇記者 「なんでやめたの?」

〇ヤマザキの妻
「警察捕まったよ。(金の引き出し役を)やってる人間は警察に捕まったよ。」
〇記者 「横浜の金を下ろす役の男?」
〇ヤマザキの妻 
「そうそうそうそう」

ヤマザキのグループは、福建省のアジトを引き払ったという。きっかけは今年8月、神奈川県で仲間が逮捕されたことだった。その後、ヤマザキは日本へ、他のメンバーは北京で身を潜めているという。

グループによる被害は、明らかになっているだけで3000万円以上。海外から犯行に及ぶという新手の手法に、果たして打つ手はあるのか。
  
〇警察庁刑事局国際捜査課 逢阪貴士さん
「11月23日に日中刑事共助条約が発効。この条約によって、今後、いっそう緊密な連携を」
  
国境を越えて、金を騙しとろうとする振り込め詐欺集団。次々と現れる巧妙な手口に、警察当局も警戒を強めている。

http://www.tbs.co.jp/houtoku/onair/20081129_1_1.html
 
Top